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神奈川県在住の石坂郁恵さん(45歳)は、同じ神奈川県内に一人暮らしをしていた母親を亡くしたばかりで、土地と自宅を遺産として相続しました。
遺産のうち現金はほとんどなく、加えて平成27年1月の相続税法改正により相続税額が思った以上に高くなってしまいました。やむを得ず、相続した土地は売却し、売却したお金で相続税を支払うことに・・・。
平成27年1月1日相続税法改正後を想定した事例です。
こんな事態が起きる人が急増します!
「母が住む自宅は、県内でも地価の高い立地でしたし、家の他にも更地になっている土地も持っていると聞いてはいたので、相続の際の心配はしていました。」
石坂さんは一人っ子。相続人が一人の場合、相続税の基礎控除額は6,000万円あるので、非課税となりすんなり相続できたはずでした。ところが、平成27年1月の相続税改正により、6,000万円だった基礎控除額が3,600万円まで控除額が減少しました。
母親が住んでいた自宅の評価額は、土地建物合わせて3,700万円。元々父の持ち物で、父の死去時に母が父から相続した更地が約1,500万円の評価で、遺産額の合計は5,200万円となりました。
相続税法改正前であれば非課税でそのまま相続出来たものが、基礎控除額が減ったことにより、課税対象となってしまいました。
石坂さんが支払わなければならない相続税額は約240万円。石坂さんの母親は、年金と父親が遺した貯金を少しずつ切り崩しながら生活していたので、現金の遺産はほとんどありませんでした。
しかし石坂さんの仕事は週3,4日のパートのみで、自分自身に支払う余裕はありません。夫に支払ってもらうとしても、贈与税がさらにかかります。さらにこの時、石坂さん夫婦の2人の子どもがちょうど高校受験と大学受験を控えていて、現金での納付は難しいように思えました。
自分の場合は相続税、かかる?かからない?
→【不動産を相続した場合の税金】相続税の計算方法と対策
相続税は、相続をした(母親が死去した)日から10か月以内に申告と納税を行う必要があります。10か月以内に240万円を一括納税できる見通しは無く、かといって延納や物納もしたくありませんでした。
そこで、仕方なく石坂さんは相続した実家と土地のうち、更地の土地のみを売却することにしました。
「もし改正前であれば相続税がゼロなので、更地も相続して駐車場として貸し出したりすることも可能だったはず。なのに相続税法改正で一気に税額が跳ね上がってしまった。どうしても相続税が払えなかったので、売らざるを得ませんでした。」
相続時は思わぬことで売却の壁が出来ることも多い
事前によく調べておくこと
売却を決めた更地は、全面が大道路で、個人経営の小さな飲食店とアパートに挟まれた40坪の土地。南側は私道で日当たりもよく、道路沿いのため交通も便利です。売却はすぐに出来るかと思っていた石坂さんですが、まさかの展開が待っていました。
実はその土地の隣の飲食店は、父の弟が経営していました。祖父の死去時に相続した土地を、兄弟で半分ずつ分けたようです。
しかも更地は、現在その個人飲食店の駐車場の一部としても使われていました。
「母も元々父から相続して取得した土地だったので、使い道に関して何も言っていなかったと。とりあえず今現在は使用していないので、駐車場として使うことを黙認していたようです。固定資産税も弟が母の代わりに払っていたようでした。」
ただ相続したこの更地を売却しなければ、相続税を支払うことができません。とにかく父の弟と、駐車場の件で話をつけなければいけませんでした。
父の弟へ相談した石坂さんですが、なかなか考えを受け入れてくれなかったと言います。
ただ相続税が240万円あることを伝え、土地売却にあたっての整地は全てこちらでやるからという条件で何とか渋々承知してくれました。
何しろ期間が10ヶ月間しかありませんから、石坂さんは急いで不動産屋へ相談し、売却活動を開始しました。
色々な不動産屋にあたって相談した結果、1,800万円が相場である土地でしたが、1,980万円で売り出しました。
売り出しから、問い合わせは度々くるものの、全てが値下げ交渉ばかり。中には1,100万円で売ってくれないかという希望もあったそうです。
それでも支払いは10ヶ月以内にしなければならないため、値下げも仕方がないのかと諦めかけていた石坂さん。すでに支払い期日が2か月後に迫っていました。
そんな時、20代夫婦から交渉が入ります。交渉価格は1,880万円でした。石坂さんは1,880万円での売買契約に同意し、手続きを進めることになりました。
相続後に、3年10ヶ月以内にその相続した不動産を売却した場合は、売却時の税金が控除される特例があります。
相続不動産を3年10ヶ月以内に売却した場合の控除・特例
→相続した不動産を売却した場合、税金が軽減されます
石坂さんの場合、この土地を「いくらで購入したのか」を証明する書類がありませんでした。その為、売却価格の5%を取得費として計算しなくてはならなくなりました。
※関連記事:いくらで不動産を購入したか分からないときは?
売却価格 | 1,880万円 |
取得費 | ▲94万円 |
譲渡 諸費用(仲介手数料等) | ▲100万円 |
「相続税の取得費加算の特例」 | ▲67万円 |
譲渡所得 | 1,619万円 |
支払譲渡税額 | 330万円 |
1,880万円で売却したため、このうちの5%である94万円が取得費となり、その他仲介手数料を差し引き「相続税の取得費加算の特例」を利用しても利益は約1,619万円。譲渡税は約330万円と金額が大きく膨らみました。
平成27年1月からの相続税法改正のうち、基礎控除の減少と合わせて施行された「相続税の取得費加算の特例」の改正も税額が膨らんだ原因のひとつです。
改正前は240万円相続税を支払ったら、240万円丸々を譲渡所得から差し引くことができましたが、“売却した土地に課せられた相続税のみ”しか経費として加算できなくなってしまったのです。
1,880万円の売却価格の中から仲介手数料などの経費を支払い、相続税と譲渡税を支払うと手元に残ったのは約1,200万円ちょっとでした。石坂さんは税額の多さに落胆したと言います。
「せっかくの親の財産だったのに、売却しなければならず多額の納税。これが相続税改正前だったら売却もしなくてよい、税金もゼロだったと思うと・・・。自分は決して裕福な方ではないのに納得できません。そもそも専業主婦やパートの主婦の方は、相続税を支払える人の方が少ないのでは」
石坂さんの事例は、相続税改正後に多くの人に想像できるパターンです。この事例から学べることをまとめてみます。
今までは相続税に関係のなかった人も、平成27年1月から基礎控除額が「5,000万円+(相続人の数)×1,000万円」→「3,000万円+(相続人の数×600万円」に減少。
相続人1人では6,000万円→3,600万円
相続人2人では7,000万円→4,200万円
相続人3人では8,000万円→4,800万円
半分近くも減少します。これ以上遺産総額があれば相続税を払わなくてはいけなくなります。
相続税が支払えず、相続した家や土地を売却する場合には期間が限られています。10か月以内に全ての売却手続きを終わらせ、申告と納税をしなければいけません。
石坂さんの事例のように、売却にあたって隣人と土地の境界線確定で揉める、名義人が両親ではなく祖父母だった、など相続には様々なトラブルが付き物です。期間が限られているので早め早めの行動を心掛けましょう。
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