毎日のくらしを心地よく

|いえと生きる

  1. HOME
  2. 不動産売却バイブル
  3. 不動産売却と相続手続き
  4. 相続不動産を売却した5人の事例
  5. 事例4「山林の処分」

不動産売却と相続手続き【山林の売却方法】かかる費用と税金、注意点

親から相続した山林を売りたい

山林の写真

親から2,000㎡を超える(605坪超)山林を相続した滋賀周二さん(55歳)。相続してから、山林は山林でも相続税法においては3種類あること、評価方法がそれにより異なることを知りました。

また、土地込みで山ごと売却する以外に、山林の木だけ売却する方法もあることも相続してから分かりました。

山林売却目次

  • 相続時の状況
  • 山林売却までの経緯
     ├ 山林の状況を把握
     ├ 売却するとしたらどんな方法があるか
     └ 山林を持ち続けているとかかる費用は?
  • どこに山林の売却を頼むか?
  • 山林売却時の税金
  • 山林売却での注意点・重要点まとめ
  • 山林を売却した際の相場はいくら?(平成24年~26年 2年間の山林売買取引状況)
     └ 山林の取引件数はどのくらいあるか(過去5年間の山林の年間売買取引件数)

相続時の状況

滋賀さんは、父親が先に、その後母親と続いて亡くなり遺産相続が行われましたが、40年ほど前に両親が山林を購入していたことが発覚。

山林の相続時の評価は山林の種類によって異なり、調べたところ滋賀さんの相続した山林は「中間山林」で、倍率方式により評価されることが分かりました。

自分の相続した山林はどう評価される?
相続土地の評価方法~価値の決まり方

今から30~40年ほど前、「原野商法」が流行しました。これは「将来値上がりするので儲かる」と、価値の低い山林や原野を高値で売る商法です。当時の被害者は相当数居た、と報じられています。

滋賀さんの両親もこの原野商法に乗せられ山林を購入したと思われました。この商法で山林や原野を購入した人は、結局値上がりもせず価値のないまま固定資産税や維持費を払い続け、相続時、処分に困ってしまう現状となっています。

「山林を買っていたなんて全く聞いていなかった。どうやら行ったこともない遠方の山林のようです」

滋賀さんは、調べるうち原野商法の被害者に二次被害が近年増加していることを知ります。

二次被害の内容とは、当時の購入者名簿を元に維持費や管理費、森林の伐採費を要求する業者が現れたり、売却を薦める電話が突然かかってきて、土地を売却する代わりに別の土地を買うよう勧められたり・・・といったものです。

一旦相続はしたものの、もうそのようなことには関わりたくない、と二次被害に合う前に山林の売却を決意しました。

山林売却までの経緯

現状把握、売却方法とかかる費用の検討

山林の状況を把握

まず滋賀さんが行ったのは、現在の山林の状況を把握することでした。具体的には下記のような項目です。

  • 道はあるのか
  • どんな木(樹種)でどのくらい生えているのか
  • 樹齢
  • 傾斜はあるのか

山林を直接見る前に、まずは登記簿と森林簿、森林計画図を参考に現状把握をすることにしました。

森林簿と森林計画図の入手方法は都道府県・市町村ごとに異なりますが、主に市役所の農林課や森林計画課で閲覧・写しの交付を受けられる地域が多いです。滋賀さんが相続した森林の所在地では、農林水産部森林計画課又は県農林事務所森林林業部で資料の閲覧と交付を受けられることになっていました。

森林簿・森林計画図の入手

 日本全国で交付の際の対応は統一されていません。問い合わせ先は都道府県の出先事務所、市町村役場窓口もしくは森林組合です。担当者が存在し、担当者でなければ詳細が分からない地域もあります。まずは問い合わせ窓口に相談を。

森林簿には面積のほか樹種や林齢の情報が記載されていて、森林計画図ではあくまで作成当時の現況ですが、全体の地図が記載されているので山林を図面で確認ができます。

売却するとしたらどんな方法があるか

滋賀さんは、相続した山林を売却する場合、方法が2つある事を知ります。

1.山林丸ごと売却する方法

最も一般的な売却方法であり、一番高く値段が付きます。山林の評価方法は以下により決まります。

  • 木の品質
  • 樹種、樹齢
  • 搬出路の有無
  • 間伐は行われているか
  • その他道路などの立地状況

名義を他の人に譲渡するということになりますので、それ以降山林について悩むことは無くなります。

2.木を売却する方法

林業には多くのお金がかかる

山の木を伐採し木材を売却する、いわゆる「林業」です。一度は林業をしてなんとか山林を生かせないか?とも考えた滋賀さんですが、以下の理由で断念しています。

  • 「山に立っている状態の木」は価値がほとんどなく、ゼロに近い→そのままでは売れない
  • 売却するためには伐採や木の処理、搬出、運搬などが必要→経費が莫大
  • 間伐をしないと良い木は育たない→間伐にもお金がかかる
  • 木材を伐採したとしても、搬出の為の道路の整備まで必要
  • 製材工場までの距離が遠い→搬出コストが大きい
  • 何ヘクタールもある山林ではなくそもそも600坪くらいの山林では利益がでるのかどうか・・・

その他に立木のみを買い取ってくれることもあるようですが、その値段は10ヘクタールで400万円ほど。1ヘクタールにも満たない滋賀さんの山林では売却の方が得でした。

山林を持ち続けているとかかる費用は?

せっかく相続した山林でもあったため、滋賀さんは持ち続けた場合の費用を考えてみました。結果、資産価値を見いだせずやはり売却の結論に至ります。

「固定資産税は毎年かかるし、将来子どもにまた相続させることになる。もしその時評価方法が変わっていれば相続税も発生するかもしれない。やはり売却してしまおうと思いました。」

ほとんどゼロに近い値段→固定資産税評価額の半値まで値段がついた

元々700万円で購入した山林ですが、山林付近の不動産屋へ相談してみると「購入当時から放置されたまま」「間伐がされていない」「道路状況が悪い」などの理由で価値がほとんど無く、値段をつけることも難しいだろうと言われました。

少しでも希望は無いかと調べていくうちに、売却を依頼する場所がまだ他にもあることを知ります。滋賀さんには売却を通して、以下の方法で売却依頼先を辿るのが1番良い道だと教えて頂きました。

どこに山林の売却を頼むか?

  • 1.一括査定で相場を把握する、価値があるかどうか知る
  • 2.山林付近の不動産屋へ相談する
  • 3.森林組合へ相談する

複数の場所へ相談をするべし!

※→不動産無料一括査定はこちらからできます。
「まずは山林に価値があるかどうかを一括査定で複数の不動産屋に査定して貰い、合わせて地元の不動産屋へも問い合わせ買い手があるかどうかを聞きます。森林組合へも声をかけておくと良いと思います」

滋賀さんはこの過程により、山林売買を専門に扱う業者を見つけ売買契約に至ります。最初値段はほとんどゼロだと言われていたものが、固定資産税評価額の半値まで値段がつきました。

予想以下の値段ではありましたが、買い手が見つかったことにただただホッとしたと言います。

山林売却時の税金

山林を丸ごと売却したときは、立木の部分は山林所得、土地の部分は譲渡所得です。共に分離課税で、他の給与などの所得とは合算できません。
※但し山林を取得から5年以内に伐採・譲渡したときは「事業所得・雑所得」です。

山林所得の計算方法

山林所得=売却価格-必要経費ー特別控除

必要経費とは
  • 植林費
  • 取得時の費用(仲介手数料、登記等)
  • 管理費、育成費
  • 伐採費
  • 売却時の費用(仲介手数料等)
所有年数が15年超の場合は「概算経費控除」が使える

(売却価格ー伐採・譲渡費用)×50%+伐採・譲渡費用

15年以上所有していた山林を売却した時は、上記の式により算出した金額を、必要経費の金額に置き換えて計算することができます。相続した山林は、所有期間も引き継いでいます。相続した日から計算するのではなく、被相続人がその山林を取得した日にちを引き継げます。

よって相続により取得した山林は、そのほとんどが所有期間15年以上であり「概算経費控除」が使えます。

税金はいくら?

山林所得にかかる税額は、「5分5乗方式」により計算されます。

(山林所得金額×1/5×税率)×5

税率※平成27年度以降
山林所得金額÷5の金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超 330万円以下 10% 97,500円
330万円超 695万円以下 20% 427,500円
695万円超 900万円以下 23% 636,000円
900万円超 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超 4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

山林を全て売却した場合は、山林部分は山林所得の計算を、土地の部分は譲渡所得として税額を計算します。
譲渡所得の計算方法はこちら

その他山林売却での注意点・重要点まとめ

境界確定に時間を取られる

山林は境界が定まっていないことが非常に多く、売却には隣接する土地の持ち主立ち合いのもと、境界確定を行う必要があります。境界確定には時間がかかることもあるので、相続税支払い期限が迫っている等急ぎの場合は、売却を決めた時点ですぐに不動産屋選びを開始すべきです。

売買取引は公簿面積か?実測面積か?

山林は広く、実測面積での取引となると測量に多くの費用がかかります。場合によっては取引価格よりも測量費用の方が高くなることも。よって山林では公簿面積で売買取引を行うことが多いです。

山林を売却する時にかかる費用・税金

  • 仲介手数料
  • 所得税
  • 住民税
  • 印紙税
  • 登記費用 等

売却にかかる費用について、詳しくはこちら。

山林を売却した際の相場はいくら?

山林はどのくらい位の価格で取引されているのかを調べてみました。

下記は過去2年間(H24~26)の山林売買取引の中で、「最高金額での売買取引」と「最低金額での売買取引」を47都道府県別にまとめたものです。

平成24年~26年 2年間の山林売買取引状況/国土交通省・土地総合情報システムより
都道府県 2年間の農地
売買取引数
最高額売買取引 最低額売買取引
市町村 価格 面積 市町村 価格 面積
北海道 1,617件 苫小牧市 字植苗 6億2,000万円 5,000m2以上 亀田郡七飯町 字峠下 0.025万円 5,000m²以上
青森県 718件 青森市 大字雲谷 1億3,000万円 5,000m2以上 三沢市 大字三沢 0.1万円 3,500m²
岩手県 865件 陸前高田市 竹駒町 1億2,000万円 5,000m²以上 一関市 大東町鳥海 0.33万円 100m²
宮城県 532件 宮城郡松島町 松島 1億3,000万円 5,000m²以上 東松島市 根古 0.48万円 165m²
秋田県 448件 秋田市 太平八田 3,900万円 5,000m2以上 由利本荘市 矢島町城内 0.1万円 170m2
山形県 462件 上山市 藤吾 2,900万円 5,000m2以上 酒田市 上青沢 0.11万円 115m²
福島県 687件 西白河郡西郷村 大字小田倉 1億6,000万円 5,000m2以上 河沼郡柳津町 大字小椿 0.23万円 230m2
茨城県 312件 東茨城郡茨城町 大字大戸 8,000万円 5,000m²以上 行方市 両宿 0.1万円 320m2
栃木県 384件 宇都宮市 下荒針町 1億1,000万円 5,000m²以上 鹿沼市 西沢町 0.2万円 850m2
群馬県 210件 渋川市 上白井 5,000万円 5,000m2 安中市 松井田町人見 0.28万円 175m2
埼玉県 155件 入間郡越生町 大字如意 1億3,000万円 5,000m²以上 秩父郡皆野町 大字下日野沢 0.44万円 890m2
千葉県 577件 市原市 うるいど南 10億円 5,000m²以上 香取郡東庄町 小南 0.08万円 4,800m2
東京都 58件 青梅市 新町 1億1,000万円 5,000m²以上 あきる野市 戸倉 0.1万円 250m2
神奈川県 120件 川崎市麻生区 黒川 1億円 5,000m²以上 足柄上郡山北町 川西 0.2万円 260m2
新潟県 695件 新潟市秋葉区 草水町 2,700万円 5,000m2以上 村上市 岩崩 0.036万円 530m2
富山県 271件 富山市 婦中町鶚谷 2,700万円 5,000m2以上 南砺市 大島 1万円 115m2
石川県 443件 金沢市 小原町 1億3,000万円 5,000m2以上 加賀市 大聖寺三ツ町 0.12万円 120m2
福井県 222件 敦賀市 浦底 7,200万円 5,000m2以上 福井市 武周町 0.053万円 105m2
山梨県 217件 北杜市 長坂町日野 2,000万円 1,200m2 上野原市 秋山 0.22万円 390m2
長野県 429件 伊那市 前原 1,900万円 5,000m²以上 小県郡長和町 和田 0.4万円 250m2
岐阜県 945件 郡上市 八幡町旭 2億8,000万円 5,000m2以上 瑞浪市 日吉町 0.1万円 250m2
静岡県 1,110件 賀茂郡西伊豆町 仁科 1億6,000万円 5,000m²以上 伊東市 宇佐美 0.1万円 340m2
愛知県 566件 北設楽郡設楽町 八橋 1億7,000万円 1,400m2 北設楽郡設楽町 三都橋 1.3万円 260m2
三重県 361件 津市 半田 5,000m²以上 660m2 伊賀市 大内 0.2万円 165m2
滋賀県 193件 栗東市 下戸山 3,500万円 5,000m2以上 米原市 吉槻 0.2万円 120m2
京都府 255件 城陽市 市辺 3億円 5,000m²以上 京丹後市 丹後町遠下 0.05万円 120m2
大阪府 49件 高槻市 大字芥川 8,700万円 2,400m2 茨木市 大字上音羽 0.5万円 4,200m2
兵庫県 424件 姫路市 夢前町山冨 2億5,000万円 5,000m²以上 赤穂郡上郡町 落地 0.01万円 840m2
奈良県 126件 御所市 大字重阪 1億7,000万円 5,000m²以上 宇陀市 榛原内牧 2.9万円 1,100m2
和歌山県 234件 西牟婁郡すさみ町 口和深 2億円 5,000m²以上 海南市 小野田 0.5万円 320m2
鳥取県 475件 西伯郡伯耆町 上野 6,900万円 5,000m2以上 東伯郡三朝町 大字西小鹿 0.15万円 150m2
島根県 1,006件 松江市 東奥谷町 2,500万円 5,000m²以上 隠岐郡隠岐の島町 栄町 0.03万円 165m2
岡山県 632件 久米郡美咲町 西垪和 1億3,000万円 5,000m2以上 岡山市南区 宮浦 0.16万円 200m2
広島県 886件 広島市安佐南区 沼田町 2億5,000万円 5,000m²以上 庄原市 上原町 0.079万円 130m2
山口県 602件 山口市 秋穂東 1億3,000万円 5,000m²以上 山口市 秋穂二島 0.1万円 115m2
徳島県 147件 高松市 塩江町安原下 5,900万円 5,000m²以上 小豆郡土庄町 小部 0.1万円 170m2
香川県 147件 高松市 塩江町安原下 5,900万円 5,000m²以上 小豆郡土庄町 小部 0.1万円 170m2
愛媛県 550件 宇和島市 坂下津 6億5,000万円 5,000m²以上 四国中央市 金砂町小川山 0.11万円 2,300m2
高知県 1,092件 高知市 長浜 2億5,000万円 5,000m2以上 吾川郡いの町 下八川十田 0.035万円 175m2
福岡県 369件 朝倉市 江川 2億4,000万円 5,000m2以上 うきは市 浮羽町小塩 0.01万円 5,000m²以上
佐賀県 255件 嬉野市 塩田町大字久間 3,000万円 5,000m²以上 唐津市 北波多上平野 0.43万円 440m2
長崎県 631件 大村市 陰平町 9,600万円 5,000m2以上 雲仙市 小浜町山畑 0.29万円 290m2
熊本県 970件 人吉市 西間上町 2億円 5,000m2以上 上益城郡山都町 貫原 0.1万円 300m2
大分県 822件 速見郡日出町 大字藤原 2億3,000万円 5,000m2以上 竹田市 大字倉木 0.25万円 200m2
宮崎県 1,136件 児湯郡都農町 大字川北 2億8,000万円 5,000m2以上 北諸県郡三股町 大字長田 0.14万円 115m2
鹿児島県 1,733件 霧島市 国分上井 1億円 5,000m²以上 南さつま市 加世田武田 0.1万円 1,000m2
沖縄県 202件 石垣市 字桃里 1億8,000万円 5,000m²以上 国頭郡大宜味村 字根路銘 1.5万円 1,200m2

山林の取引件数はどのくらいあるか

山林の年間売買取引件数(平成21年~25年)棒グラフ
※国土交通省の土地総合情報システム「不動産取引価格情報検索」にて調査

このように山林の取引状況は農地売却と比べて少ないものの、決して需要が無いわけではありません。

むしろ山林の取引件数は微増ながら近年増加していて、平成26年は現在集計中ですが第1半期・第2半期を見ると同様に増加傾向が見られます。

【相続した不動産をより高く売る方法】
不動産の査定価格は業者によって数百万円も差があります

不動産の一括査定で家の査定額が1,350万円→1,800万円で売却成功!
【450万円高くなりました】

HOME4U(ホームフォーユー)は、NTTデータグループ運営の安心して利用できる不動産一括査定サービスです。最大6社へ無料で不動産の一括査定依頼ができ、複数社の査定額を比較できます。

一括査定してもらえる不動産業者一覧

比較するから最高額が見つかり、不動産の相場も把握できます。もちろん査定は無料です。
不動産一括査定はこちらからできます

← 事例3「相続税が払えず」 事例5「隣人と大揉め」 →
物件売却前の必須知識
知っておきたい査定の裏側
失敗しない不動産業者の選び方
物件売り出し中の交渉術
売買契約とその後
不動産売却と相続手続き
ケース別売却ノウハウ
土地売却のコツ
このメディアの創り手

不動産を売却した過去の経験から、売主・買主共に最後まで気持ちよく売買取引ができる術をまとめました。