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益田惇さん(67歳)は、山口県出身。上京したのは大学の時で、それ以来都内で暮らしてきました。山口県の実家へは子どもが小さい頃こそ、孫の顔を見せようと夏休み、年末年始など年2,3回は帰省していましたが、子どもが結婚して家を出てからは帰省する回数もだんだんと減ってきていました。
8年前に父親が死去。その5年後に母親も亡くなり、山口県にある実家は空き家となっていました。益田さんには妹がいて、実家の付近に住んでいたため土地と家の管理は任せっきりでしたが、様々な経緯を経て益田さんの定年を機に移住を決意しました。
母親が死去したときの遺産は、実家が土地950万円、建物50万円という評価額でした。さらに預金が約700万円あり、これを益田さんの妹と分割することになりました。
分割は平等に1/2ずつ分けることになり、実家は2人の共有名義に、預金も半分ずつ分ける事で合意しました。
基礎控除額以内のため、相続税の対象にはならず、税金負担はありませんでした。
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いつか使うかもしれないと売却せず残していた実家。空き家となった家を主に管理していたのは、益田さんの妹でした。
東京の自宅から山口県の実家までは新幹線で往復5万円、片道5時間かかる道のり。会社員である益田さんには遠く、年に1度様子を見に帰ることが精一杯でした。
「妹は月に2,3回実家へ通い、窓を開けて空気を入れたり掃除をしてくれていました。ただ、妹自身の生活もありますから、それも億劫になってきたようです。」
益田さんの妹は、嫁ぎ先のご両親と同居していました。その為、家を空けると姑から文句を言われたりすることもあったそうです。その為妹から、実家の管理が辛い、帰る気がないのであれば処分を考えたいと相談を受けるようになります。
益田さん兄妹がまず考えたのは、実家を売却することでした。母親は大変綺麗好きでしたし、家も大切に使っていたためまだまだ人が住める状況でした。さらに実家は住宅街にあり最寄駅からは徒歩10分の距離。
なんとか売却できるのではないかという気持ちからの選択でした。
地元の不動産屋へ相談し売却活動を始めたものの、反響は良くなく売却は難航していました。その後、売却方法を土地として出してみたり、オープンハウスも何度か行いました。
しかし、不動産屋との契約は3カ月ごとの更新でしたが、2度の更新後も買主は現れませんでした。
もうすぐ売却開始から1年が経とうしていた頃、益田さんは定年退職を迎えます。一方、妹の実家の管理も限界を迎えていました。
益田さんの定年退職を機に、実家へ夫婦で移り住む話が持ち上がりました。この1年間で、内覧希望や問い合わせはたったの数件。売れそうな気配はありません。
そこで発想を転換して、田舎の実家よりも需要がある都内の自宅の方を売却して、実家へ戻る計画を立てたのです。
「自宅は既に住宅ローンも払い終えていましたし、子どももそれぞれ結婚して家を出ていました。帰るなら今しかない、と思いました。あとは妻が同意してくれるかどうかが問題でした。」
益田さんの自宅は、東京都国立市にありました。賃貸も一度は考えましたが、実家から東京は遠いですし不動産屋に管理を任せきりになってしまう。都内は固定資産税も高い。それならいっそ売却をという思いで妻に相談を持ちかけました。
益田さんの妻、和香さんは生まれも育ちも東京で、地元を離れることに不安がありました。しかし子どもも手が離れ、孫が休みに遊びにくるのも良いかもしれないという気持ちから、益田さんの計画に同意。自宅を売るための不動産屋探しを始めました。
迷ったのが、どこの不動産屋へ頼むかだったと言います。
「山口県の実家を売却した時は、何も考えず実家から近い不動産屋へ依頼したが、1年間売れずだった。あとから不動産屋次第で売却の期間も値段も異なると知り、益々不動産屋選びには慎重になろうと思いました。」
益田さんは不動産屋数社へ相談をし、国立市は住宅地としては人気があり、「国立市で探したい」と地域限定で探している人が多いということ、さらに時価も高いので中古住宅は需要がある、ということを教えてくれた地域密着の不動産屋へ仲介をお願いすることに決めました。
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国立市で昔から営業している不動産屋に頼んだのは大正解で、担当者は家近辺の良いところを知り尽くしていました。
例えば子連れの家族には公園や幼稚園、保育園の情報をさりげなく話してくれたり、年配のご夫婦には付近のスーパー、市の保健事業、どこの病院が良いなどの意見や、さらには老人会の情報までを伝えてくれたのです。これには大助かりで、益田さんは実質何もしゃべらずとも営業がしっかりと行われていったと言います。
「内覧の希望は週1回は入っていました。週2回の時もあったり、大反響。田舎の実家の時とは全く違いました。」
売り出し開始から1か月半、購入希望の連絡が2件立て続けに入りました。売り出し価格が3,980万円だったのですが、3,800万円、3,880万円の2件の申し込みがほぼ同時に入りました。
申し込みが入ったのは10月の半ば。年内引き渡しということを条件に、3,880万円で自宅を売却することとなりました。
「私が実家に戻って、一番喜んだのは妹かもしれません(笑)。」と益田さんは言います。
「妹はこの1年半ちょっとの間、ずっと実家に通い管理をしてくれていましたから。人が住んでいなかったのにとても綺麗に維持してくれて、妹には頭が上がりません。」
自宅を買った時よりも、売った時の方が約200万円ほど値下がりしていました。よって利益は出ず、税金もかかりませんでした。
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相続時には益田さんと妹の共有名義としていた実家ですが、今回の移住を機に、益田さん一人の名義に変更。その対価として、妹には実家の評価額の半分を現金で渡すことになりました。
つまり、益田さんは妹の持ち分を現金で買い取った形になります。益田さんは母親名義の預金を相続時に約350万円受け取っていましたので、その預金と、自宅を売却した資金を使って支払いました。
益田さんの事例から、学んだ事をまとめてみます。
実家にいつか帰るかもしれない、誰か身内で住むことがあるかもしれない・・・。そんな気持ちで実家を空き家として取っておくことは非常に多いです。
ただ、問題は家の管理をどうするかです。不動産屋へ頼んでもそう頻繁には見てくれないことが多く、手数料もかかります。かといって近所の人には頼めない。身内が管理してくれたとしても、それは想像以上に時間を取られます。
地方の実家を売却したけれど、なかなか買い手がつかない・・・と悩んでいる方は、益田さんのような発想の転換も選択肢として考えてみると良いと思います。
地方の土地や家を売るよりも、都内にある土地・家を売却した方が明らかに売れやすく、早く事が進みます。なかなか簡単に実行出来ることではないですが、ひとつの選択肢として考えてみると視野が広がると思います。
益田さんの場合、相続時に実家を妹との共有名義にしたので、その後結局益田さんひとりの名義にした際、その分の対価支払いなどその後の手続きが大変面倒になってしまいました。
不動産を相続した時は、その後の不動産をどうするか、管理は誰がするか、誰が使うかなどをしっかり話し合ったうえで名義人を決めるようにしましょう。
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