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不動産売却と相続手続き【相続土地の売却】事例1「借家から売却へ」

両親の思い出の家を売る気になれず、借家にしたが最終的には売却へ

写真「実家の畳の部屋」

香川県に住む西沢博さん(53歳)は、別居していた一人暮らしの母親を2年半前に亡くしました。実家は西沢さんの自宅から車で40分の距離にあります。

相続後、売却も一時は考えた西沢さんですが、自分が幼い頃から育った家で、両親の思い出の遺産でもある実家を売却する気にはなれませんでした。

だからといって放置するわけにもいかず、西沢さんは考えた末に貸し出そうと不動産屋へ相談。借り手を募集してから4カ月半、ようやく30代の夫婦が現れ賃貸契約となったのですが・・・

相続時

西沢さんは2人兄弟で、遺産分割協議をした結果、両親の家は西沢さんの名義に、弟は預金を相続するということで協議がまとまりました。

西沢さんが相続した実家の評価額は、土地が1,600万円、家は約120万円、弟が相続した母親の預金は約1,500万円。その他の家財を合わせると約3,300万円ほどになりましたが、相続人が2人いる場合の控除額は当時7,000万円(H27~相続人が2人の場合は4,200万円に縮小)だったので、相続税の課税対象にはなりませんでした。

自分の場合は相続税、かかる?かからない?
【不動産を相続した場合の税金】相続税の計算方法と対策

相続した実家を賃貸住宅に

家賃は月5万2千円

最寄駅からは徒歩12分という立地に、築37年。設定された家賃は5万2千円で付近の借家と比べると割安ではありますが、それでも賃貸収入として年間62万4千円。

固定資産税が年間約18万円、さらに給与所得と合わせた所得税が29万円、不動産屋への管理費、手数料がかかりますが、収入としてはプラスの見込みだったので西沢さんは安心していました。

家の修繕費がこんなにかかるなんて・・・

賃貸住宅は、家に不具合が出た場合、故意でなければ貸主が修理費用を負担する場合がほとんどです。

修繕費用とは、屋根や外壁の補修、防水、各機械・設備・給排水管の補修や交換などのことを言います。通常は10年に1度修繕すればよいのですが、他界した両親は、家のメンテナンスを入念に行っていた訳ではありませんでした。

借主の入居からほどなくして、様々な不具合を指摘されるようになりました。

雨漏りなどの急を要するもの、生活に支障が出るものであればまだ納得はできたのですが、貸主の入居月数が増すにつれてドアの建てつけが悪い、エアコンが古くて効かないなどの要求があるようになりました。

築37年の家で、さらに家賃は5万2千円という安めの設定でしたから、正直ここまで言われるものか・・・と感じた西沢さんでした。

借主の家の使い方が気になるように

さらに追い打ちをかけるように、新たな気苦労が始まりました。借主の家の使い方についてです。

貸し出した家の庭には、亡くなった母親が昔から大切に育てていた植木がありました。その木が車を駐車する時に邪魔になるからと、許可なく切られてしまったのです。

さらに集落のゴミ捨て場が遠いから、と役所へ電話をし、実家の塀のすぐ前に新たな集積所が勝手に作られました。

収入と出費がほぼ同じに

賃貸契約がもうすぐ2年になろうとしていた頃、収入と修繕費用や税金などの出費を計算してみたところ、かろうじてプラスになるかというラインでした。

エアコンを新しくして、雨漏りを直し、ドアの建てつけも要求通りに直しましたが、今後予想される1番の出費は外壁と屋根の修繕でした。

西沢さんの両親は、新築から20年経った頃に一度だけ外壁と屋根の塗り替えをしていましたが、それ以来17年間何もしないまま年月が経過していました。

雨漏りを直してもらった業者から家の規模から考えられる修繕費用は約120万円との見積りをきき、西沢さんはある決意をしました。

借家をやめ、売却することに

賃貸契約解除、売却へ

西沢さんは自分自身も一戸建てに住んでいました。当初は自宅の住宅ローンを、実家の賃貸収入で半分まかなえたらという気持ちでいました。

ですが、維持費がかかり続けることや、家の使われ方が気になって仕方がないことから、いっそ手放してはどうかと考え始めたのが相続から2年2カ月たった頃でした。

思い出の家ではありますが、このまま維持費を払い続けて、日々借主の動向が気になって仕方がなく生活していくよりも、いっそ売却して現金にしてしまった方が気持ちも楽だと考えたのです。

賃貸契約は1年ごとでしたから、次回契約時に賃貸契約解除をすることに決め、借主にも不動産屋を通して伝えてもらいました。3年もたたずの契約解除でしたので、借主にはお詫びとして気持ちですが粗品を用意しました。

売却は他の不動産屋で

借家として管理をして頂いていた不動産屋では、家を売却するとしたら1,000万円でも厳しいだろう、ということを言われました。

最初は真に受けていたのですが、家を売却する時は複数の不動産屋へ相談するのが必須だということを知り、西沢さんは他の不動産屋へも相談することにしました。

相談したのは大手不動産屋と、自宅のそばにある小さな不動産屋。すると、築37年とはいえ、借家にしていた際に借主の要望に応えて様々な修繕を行っていたことが功を奏して、結果両方の不動産屋で1,300万円はいくだろうという意見でした。

改めて、複数の不動産屋へお願いして良かったと実感しました。どちらの業者にお願いするか迷った結果、全国に広いネットワークを持つ大手不動産屋へ仲介をお願いすることにしました。

不動産売却時は複数業者への相談・査定が必須!
高値売却できる、不動産屋の選び方

売り出し価格は1,480万円に設定

広い敷地と立地、他の類似物件調査の結果と、売却は急いでいないことから西沢さんの希望で、相場よりやや高めの1,480万円で売り出しを開始することになりました。

大手不動産仲介業者の強みを生かし、インターネット上の不動産情報サイトへの積極的な掲載や、チラシを撒くなどの販売活動は見事なもので、売り出しを始めてからおおよそ3カ月程で内覧希望者が現れました。

内覧は平日昼間希望ということだったため、当日西沢さんは仕事があり立ち合うことができませんでしたが、不動産屋の担当者が代わりに全てを引き受けてくれたそうです。

値下げ希望が入るが、売却決定

その後、内覧に来た方から200万円の値下げ依頼のお話がありました。200万円値下げという事は1,280万円ですが、この3カ月間で内覧希望者がその方だけだったこと、不動産情報サイトへ掲載しているこの家のページへのアクセスが少ないということから、ここで妥協してはどうかという意見が担当者からありました。

弟とも相談し、結局1,280万円での売却を承諾することにしました。購入した方は、この家をフルリフォームして使用するのだそうです。

両親の思い出の家がフルリフォームと考えると寂しくもあり、西沢さんは何とも言えない気持ちになったそうですが、その反面、あの土地でまた暮らしてくれる人がいるのだと思うと嬉しく思う気持ちもあったと言います。

西沢さんは、あのまま維持費を払ったり家の現状を気にしているよりは良いだろう、と今では心から思っているそうです。遠回りはしましたがやっと両親の家の整理ができたと喜んでいました。

売却時の税金

不動産を売却したときは、分離課税と言って他の給与などの収入とは別に税金の計算をします。

相続した不動産は、所有期間も引き継ぎますので、所有期間が5年超の税率が適用されます。

売却価格 1,280万円
取得費 土地購入・家建築代金合計 ▲1,900万円
 〃  諸費用(仲介手数料、登記等) ▲80万円
譲渡  諸費用(   〃     ) ▲50万円
譲渡所得 ▲750万円

上記の通り、西沢さんの場合は両親が取得した家・土地の価格よりも売却価格が低くなっていますので、税金の負担はありませんでした。

これはご両親がしっかり当時の取得費用や経費がわかる書類を取っておいてくれたことが幸いしています。もしも取得価格が不明な場合は、売却価格の5%が取得費として計算されてしまいます。

つまり、取得費が分からなかった場合では1,280万円の5%である64万円が取得費とされてしまい、利益が1,200万円以上も出てしまうため、譲渡税が200万円以上もかかってしまうところでした。

借家か売却かで迷っている方へ

西沢さんの事例から、学ぶことは3つあります。

1.借家は維持費が発生する

借家は、不具合や経年劣化の修繕費負担は全て貸主がしなければなりません。賃貸収入だけを計算するのではなく、修繕費用がいくらかかるかという試算が必要です。

また、賃貸収入は他の給与と合算し、確定申告後、所得税・住民税の納税が必要です。不動産屋へ管理を依頼する場合は、管理費もかかります。

2.思い出が壊されることもある

西沢さんのように、勝手に家をいじられたというパターンは珍しいことではありません。

思い出の沢山詰まった実家を売却したくないという気持ちから借家として残したのに、反対に貸した人に思い出を壊される場合もあるのです。

3.売却は複数の不動産屋へ相談する

西沢さんは最初の不動産屋で、売却では1,000万円いかないだろうと言われていましたが、他の不動産屋にも相談してみた結果1,280万円で売却することが出来ました。

ひとつの不動産屋に相談するだけではなく、相続した土地・家を売却する時は必ず複数の不動産屋へ相談するようにしましょう。

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