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売買契約とその後土地売却後のトラブル(瑕疵発覚事例)

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土地売却後の瑕疵発覚によるトラブル事例10

どのような時に損害賠償請求が
認められているのでしょうか?

土地の瑕疵担保責任【売却時買主にどこまで伝える?】
↑こちらのページでご説明した通り、売買した物件に隠れた(売主から伝えられていない)欠陥や不具合が売却後見つかったとき、売主はその責任を取る必要があります。

このページでは土地売却後に起こり得る「瑕疵発覚によるトラブル」&「損害賠償事例」を掲載しています。

【買主からの請求が認められた事例】【買主の請求が棄却された事例】と分けて掲載しているので、どのような時に損害賠償請求が認められるのか契約前にチェックしておきましょう。

土地売却時の瑕疵発覚によるトラブル・裁判事例一覧

買主からの請求が認められた事例

買主の請求が棄却された事例

買主からの請求が認められた事例

1.土地の地中にコンクリート塊等の産業廃棄物が見つかった

損害賠償額 2,480,000円

経緯
平成8年3月4日 売主は仲介業者Aの媒介により、買主へ土地を売却。金額は1億7226万円。
売り出し価格は1億7506万円で、買主の値引き交渉に売主が応じた形で契約が交わされた。買主は該当土地に自動車修理工場を建設予定だった。
平成8年3月23~25日 杭を打つ場所でボーリング調査を行う。地中に障害物は発見されなかった。
平成8年6月4日 杭工事開始。地中にコンクリート塊、ビニール片、電気コード等の産業廃棄斑が大量に埋まっていることが発見される。杭工事を続行することができない。
買主は杭を打つ場所のコンクリート塊等の除去を行い、その後杭工事を行った。
平成8年6月5日 買主は仲介業者Aを通じて、売主に連絡。地中から産業廃棄物が発見されたので現場を見て欲しいと伝える。
売主は現場を見に行くも、大量のコンクリート塊は既に搬出された後だった。
本件建物の建築工事を行っていた建設会社Bはその後2度にわたりこの土地で産業廃棄物を発見。Bの負担により処分した。
これのおかげで工事期間は延び、結果従業員の日当など建築会社Bの管理費が増大した。
建築会社Bは、本件建物の建築工事に必要な費用とは別にかかった費用として、土地の買主へ248万円余を請求。
平成9年4月 買主は売主に対し、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求として、248万円余を求める訴訟を提訴。
判決
  • 買主がこの土地を購入したのは、工場建設目的であると売主は知っていた。産業廃棄物は最初のボーリング調査で発見されず、杭工事に着手して初めて発見された。
  • また、建設会社Bは着手していた杭工事や根伐工事等を中断してこれら廃棄物を除去せざるを得なかった。
  • これらから、この土地には隠れた瑕疵があったと認められる。
  • 買主は産業廃棄物の除去費用等を支出したことにより、同額の損害を被っている。
  • 買主はH8.6.4に産業廃棄物を発見し、翌5日には本件土地を検分してほしいと売主に通知しているから、土地の受け取りから6カ月以内に瑕疵を発見し直ちに売主に通知したと言える。
  • よって、売主は買主に対し、248万円余を支払え

(東京地裁平成10年10月5日判決 容認公訴 判例タイムス1044号133頁)

2.マンション建築用地に地中障害物が見つかった

損害賠償額 30,900,000円

平成6年9月 買主は、媒介業者を通じて売主より土地建物を7億4500万円で購入。
7階建て分譲マンションを建築目的だった。
平成7年5月 建物解体工事・マンション建設基礎工事開始。
多数のPC杭、二重コンクリートの耐圧盤等の地中障害物が発見される。
その撤去に3,090万円がかかった。
買主は、売主に対して損害賠償を求めた。
売主は「低層建物の建築には支障にならない」と主張。
判決
  • 売主は、買主がこの土地を買った目的が中高層マンション建築予定だと知っていた。
  • 買主は、本件契約に先立ち、売主提供の図面で起訴の位置等を確認した上で解体工事を進めたところ、図面に記載がない地中障害物が発見された。
  • この土地に中高層マンションを建築するには、地中障害物の撤去に3千万円以上かかる。
  • これらの事実から、この土地には中高層マンション建築予定の土地として品質、性状を備えていない。これは隠れたる瑕疵にあたる。
  • よって、売主は買主に対し、3,090万円を支払え

(東京地裁 平成10年11月26日判決 確定 判決時報1682号60頁)

3.購入後、発生した地震により宅地・住居に被害を受けた

損害賠償額 21,000,000円

経緯
昭和42年~45年 地方公共団体が仙台市北東部の丘陵地に大規模な住宅用団地を造成。順次分譲販売した。
昭和44年~46年 買主ら(8名)は、団地内の宅地をそれぞれこの地方公共団体から買い受けた。
売主である地方公共団体は、この各宅地が盛土地盤あるいは切盛境の地盤であったのに、
それらを説明しないまま販売した。
買主ら8名は、そのことをしらないまま敷地にそれぞれ木造家屋を建築して入居した。
昭和53年6月 宮城県沖地震が発生。該当土地での気象庁発表震度5強。
各宅地に数か所の亀裂と一部地盤沈下が発生。
これにより各居宅にも基礎及び壁面の亀裂、床面の沈下等の被害を受ける。
買主らは、売主であった地方公共団体の造成工事に問題があったことにより
この地震で宅地・居宅に損害が発生したとして提訴。
一審では買主らの請求は棄却。売主の瑕疵担保責任は否認された。
これに対し買主らは控訴。請求総額は約4,500万円。
判決
  • 地質調査で標準貫入試験を行ったところ、N値が4~10であった(10以下は宅地地盤としては不適当)。
  • 現場の状況から宅地に発生した亀裂原因は盛土地盤の軟弱性から発生した現象と認められる。
  • 土地造成当時、この地域では10年に一度震度5程度の地震が発生していた。このことからその程度の地震に耐えられる宅地でなければ一般的な造成宅地として通常有する品質と性能を欠くものといえる。
  • 本件各宅地の震度は5であったから、その程度の地震に耐えられなかった各宅地には隠れたる瑕疵が存在するものといえる。
  • 売主は過去の新潟地震等の経験から事前に地質調査等を行って、耐震性の高い地盤にする造成工事を行うことは可能であった。
  • これかのことから、各居宅の修補費用等のうち、瑕疵と相当因果関係にある7割相当額および今後必要となる特殊基礎工事費として売主は買主に対し、総額2,100万円を支払え

(仙台高裁 平成12年10月25日判決 上告棄却・上告受理申立不受理 確定 判決時報1764号82頁)

4.土地上で殺人事件が過去に起きていたことが発覚した

損害賠償額 751,575円

経緯
Yさんは隣接する土地1及び土地2からなる土地の所有者だった。
昭和62年7月 Yさんは土地1をAさんに賃貸。
Aさんが建物を所有して事務所・居宅として使用していた。
平成8年4月 本件建物にはBさんが居住していた。
同月、本件建物で女性の刺殺体が発見され、Bさんが殺人容疑で逮捕される。
平成13年3月 土地2をYさんはDさんに自動車置き場として賃貸。
平成14年5月 Yさんは土地2についてDさんとの賃貸借を合意解約。
平成15年4月~平成16年3月 Aさんは本件建物をCさんに使用させる。
平成16年5月 本件建物を取り壊す。YさんとAさんは賃貸借契約を合意解約。
平成16年11月 Xさんが、Yさんから更地となった本件土地を1503万1500円で購入した。
土地を等面積に分け建売住宅を建築して販売する目的。
平成17年1月 Xさんは本件土地の建売住宅用地として販売広告を行う。
平成17年3月 土地購入者のキャンセルをきっかけに警察に照会。
本件建物内で殺人事件があったことを知る。
その後も引き続き殺人事件があったことを知らせずに
土地を2500万円で売却広告を出すが売却できていない。
Xさんは本件建物で殺人事件があった事実が
民法570条の「売買の目的物に隠れた瑕疵があった時」に該当するとして
Yさんに対して損害賠償を請求する訴えを提起。
判決
  • 「瑕疵がある」というのは物理的欠陥だけでなく、目的物に嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥がある場合も含まれる。
  • 本件は本件土地の3分の1強の面積に匹敵する本件土地1にかつて存在していた建物内で殺人事件が発生したもの。
  • 女性が胸を刺されて殺害されるというもので残虐性が大きい。通常一般人の嫌悪の度合いも相当大きい。
  • この殺人事件は新聞にも報道されている。売買から約8年以上前に発生したものとはいえ、付近の住民の記憶に少なからず残っているものと推測される。
  • 土地購入キャンセルが現に起こっており、今後ももし土地が売れても殺人事件について居住者の耳に届く状態がつきまとうことが予想される。
  • 以上により、本件土地は住み心地が良くなく居住の用に適さない。心理的欠陥がなお存在するというべき。
  • ただ、殺人事件が売買の約8年以上に発生したもので、本件建物は売買時にはすでに取り壊されているため、嫌悪すべき心理的欠陥は相当程度風化していたといえる。
  • 諸事情を統合すると、Xさんの損害額は売買代金の5%に相当する75万1575円と認めるのが妥当。

(大阪高裁 平成18年12月19日判決 公訴棄却 上告 判例時報1971号130頁)

5.土地上で過去火災による焼死者があったことが発覚した

損害賠償額 2,000,000円

経緯
平成16年12月 本件土地上には3棟の建物があった。
平成16年12月27日 午前0時8分ごろ、3棟の建物のうち中央に位置する建物から出火。
原因はタバコの火の不始末と推測される。
この火災により、火元に居住していた男性1名が焼死した。
平成20年7月30日 法人買主X社が売主から本件土地を1億1858万円で買い受ける。
平成20年11月17日 本件土地が売主から法人買主X社に引き渡される。
仲介業者はX社から仲介手数料として335万7400円の支払いを受けた。
法人買主X社は、本件土地上に5棟の建物を新築。
平成20年12月20日 新築建物の分譲を開始。
近くの者から本件土地では過去火災による死亡事故があったことを知らされる。
法人買主X社は、事件の調査を仲介業者に依頼する。
仲介業者が売主に問い合わせたところ、3~4年前に本件土地上の建物内での焼死者がいた事実を確認。
法人買主X社へ報告した。
法人買主X社は本件土地を分筆し、新築建物とともに分譲しようとしたが
b号棟については売却価格を下げても未成約の状態であった。
平成21年2月7日 法人買主X社は売主に対して減縮前の本訴請求額と同額を支払うよう催促。
また、同月9日には仲介業者へも催促し、争いになった。
判決
  • 本件土地上にあった出火建物で焼死者が出たこと、またこの事実の記憶が近隣住民に残っていることから、この土地の買い受けに抵抗感を抱くものが相当するあることは容易に推測できる。
  • 「瑕疵がある」とは物理的欠陥だけでなく、心理的欠陥がある場合も含まれる。
  • この土地には隠れた瑕疵があったと認められる。
  • 本件売買契約当時、仲介業者は火災事故の事を認識していたという証拠は足りないため、仲介業者に説明義務違反があるとはいえない。
  • この火災事故は売買契約の約3年半前のことで、他殺や自殺ではなく、出火建物も既に取り壊し済みである。
  • 諸事情を統合すると、買主X社がこの瑕疵により被った損害額は、b号棟が占める代金分の10%である200万円と認めるのが妥当。

(東京地裁 平成22年3月8日判決 一部容認 ウエストロー・ジャパン)

買主の請求が棄却された事例

1.除斥期間が過ぎたあとの地中障害物・土壌汚染対策費の損害賠償請求

売買契約書で瑕疵担保責任について定めておくと安心です

経緯
平成19年4月19日 建設工事・不動産売買等を行うX社は、訴外の不動産会社の仲介で
売主から42筆6500㎡の土地を9億円で契約締結(うち9筆は国有地及び私有地※青地・道路・水路)。
この際の売買契約には下記の点が明記してあった。
・隠れた瑕疵がある場合の請求は引渡後2年を経過したときはすることができない
・土壌汚染に関する法令の基準値を超える土壌汚染が検出された場合、又は地中障害物等が存し、買主がマンションを建築・分譲するにあたり、撤去に多大な費用を要する時は、本件契約の目的を達成することが出来ない場合に該当し、売主又は買主は本件契約を解除することが出来る」
平成19年5月30日 X社が中間金2億円を支払い、本件土地のうち22筆の所有権を取得。
平成19年6~7月15日 本件土地のボーリング調査が行われ、
土壌内に磁石、礫、コンクリート片等が混入していることが発見される。
平成19年7月13日 X社は売主の実妹から本件土地に隣接する土地の所有権を取得。
平成19年9月12日 X社と売主との間で下記の覚書を締結。
・本件土地のうち市有地を本件契約の目的物から抹消
・市有地の払下げに要する想定金額として1,500万円を売買代金から減額
・地中障害の撤去に多大な費用が発生すると思われるため売買代金のうち500万円を土壌汚染の改良費用を担保するため、支払いを留保。
・留保金の精算時期は地中障害の撤去または土壌汚染改良に係る費用の総額が判明した時期。
売主は覚書締結日までに目的物から抹消された市有地を除く本件土地をX社へ引き渡した。
X社は同日本件土地を一括してマンション分譲業者に売却。
所有権移転登記手続きをした。
平成22年1月19日以降 X社はマンション分譲業者から「土壌環境調査費」「PCB汚染土搬出処分費」等の計3754万円余の請求をうける。
請求通りに支払う。
X社は売主に対して廃棄物の運搬・処理費用3754余を支払ったとして費用を請求した。
平成23年4月 X社は、売主に対して、マンション分譲業者に支払った金額の損害や説明義務・除去義務違反
等の理由から合計6,137万円を請求する裁判を提起。
判決
  • X社は覚書による瑕疵担保の除斥期間の始期に係る合意があること、損害賠償請求権が保存されていることを主張している。
  • 覚書は、瑕疵担保に基づく損害賠償請求権を「担保するため」に留保金の精算時期を定めるものにすぎない。
  • 瑕疵担保責任の成否は、契約書の条項によって定めるほかなく、覚書が契約書の条項に言及していない。
  • 覚書が売買契約間の瑕疵担保責任に何らかの変更を加えるものということはできない。

(東京地裁 平成25年5月28日判決 控訴 ウエストロー・ジャパン)

2.ガケ条例により建築規制を受けたことは土地の瑕疵にあたると訴えられた

重要事項説明書に記載し、事前に説明しておくことで
後日のトラブル防止に繋がる

経緯
平成21年11月~12月頃 宅建業者が本件分譲地を購入。
土地を7つの区画に分割して販売するため。
※【ガケ条例について】
東京都建築安全条例第6条(ガケ条例)では、高さ2mを超える崖の下端から水平距離がガケ高の2倍以内のところに建築物を建築する場合には、原則として高さ2mを超える擁壁を設置しなければならないと定められている。
ただ、既存の擁壁が存在し当該擁壁が所定の要件を具備する場合には、改めて擁壁を設置する必要はないこととされている。
宅建業者は本件分譲地にガケ条例の適用があるか否かを調査。
本件分譲地のうち3区画についてはガケ条例の適用による規制を受ける土地として販売することとした。
そのうち1区画については建築確認申請の際の行政判断を待たなければ規制を受けるかどうかが判断ができないと考え、この区画については「ガケ条例の適用可能性がある土地」として販売することとした。
もし申請の際にガケ条例適用規制を受けることが明らかとなった場合には、基礎一体型の擁壁を作り対応することとした。
この1区画が今回の問題となった土地。
平成22年2月7日 買主は不動産業者仲介により、宅建業者から本件土地を4,400万円で買い受ける旨の売買契約を締結。
平成22年3月29日 売主は宅建業者と1,380万円で建築請負契約を締結。
平成22年5月25日 間取り決定確認書により、建築する建物の内容を確定。
建築確認申請を行ったところ、本件土地がガケ条例の適用を受ける土地であり、申請した建物を建築するには本件土地の北側部分に防護壁を設置する必要があると指摘を受ける。
平成22年7月13日 宅建業者は買主に対して、上記ガケ条例適用土地について説明。
その為の間取り変更・工期変更を承諾してもらえれば、防護壁についての費用は宅建業者が負担することを提案。
平成22年7月26日 宅建業者は、基礎と防護壁が一体化した構造の建物に修正した図面を作成。
買主に送付した。
この図面と間取り決定確認書の建物は、形状・面積ともほぼ同一で間取り変更をする必要はなかった。
平成22年9月28日 基礎と防護壁が一体化した構造の建物に修正した図面に基づき建築確認を受けた。
その後、買主は「土地の瑕疵により売買の目的を達することができない」として本訴を提起した。
判決
  • 買主は、重要事項説明の際に本件土地がガケ条例の適用を受ける可能性がある旨の説明をうけた事実が認められる。
  • ただし、不動産業者すらこの土地がガケ条例の適用をうけるかどうか判断できなかったのだから、一般消費者である買主がガケ条例規制を知らなかったことに過失はないことは明らか。本件土地には隠れた瑕疵があるものと認められる。
  • 買主は、宅建業者から本件建築予定建物が建築できるとの説明を受けて本件土地を購入している。
  • 本件土地は結果としてガケ条例の適用による規制により防護壁を設置せざるを得なくなったものの、建物自体は間取り決定確認書の建物とほぼ同じ建物を建築することができる。
  • これらから、契約をした目的を達することが出来ない、とまでは認められない。
  • よって売主は契約を解除することはできないし、解除に基づく原状回復請求としての売買代金等の返還請求は理由がない。

(東京地裁 平成25年2月5日判決 ウエストロー・ジャパン)

3.売買後発見された地下水汚染について

契約締結前の土壌汚染調査が大切!
売買契約書の定めも重要です

経緯
本件土地の買主は家具製造を行う会社、売主は自動車の部品を製造販売する会社である。
平成19年10月5日 買主は売主から155億円で土地建物を購入。
本件土地では土壌汚染対策法で特定有害物質とされている鉛、エトラクロロエチレン、六価クロムを使用していた。
売主は本件建物について「いかなる場合も瑕疵担保責任を負わない」とし、
瑕疵が発見された場合であっても買主は契約を解除したり、損害賠償請求をすることができないと不動産売買契約書で定めていた。
売主は本件土地の土壌汚染を調査した結果、一部に基準値超過があることを確認。
土壌改良工事及び地下水浄化工事を平成20年5月末までに実地することを確約。買主はこれを了承した。
将来本件土地の土壌や地下水に汚染が発見された場合でも、売主は一切責任を負わないことも定めた。
買主が本件建物を建て替える時に、新たな地中埋設物の存在が判明し建物建築に支障が生じる場合は、協議のうえ売主が処理費用を負担することとした。
平成20年3月31日 売主から買主の会社へ所有権を移転。
本件土地の土壌汚染・地下水汚染対策工事が同年9月末まで遅延することを合意。
平成20年10月 土壌汚染対策法に基づく調査と対応が終了。
地下水浄化対策時に地下水に六価クロムが検出されたことを買主へ通知。
平成21年7月 本件汚染(六価クロム)の除去工事費の負担には応じられず、買主に負担してもらう旨を通知。
これに対して買主は、売主は売買契約締結時にはこの汚染を認識していなかったことについて重大な過失があった等として提訴。
判決
  • 売主が本件契約締結時に本件汚染が生じていたことを認識していたことを裏付ける証拠がない。
  • 本件土地上の工場でかつて六価クロムが使用されていた事実と、本件土地に本件汚染が存在していることは別個の事実である。土地上の工場で六価クロムが使用されていれば土地中に六価クロムが存在するのが一般、との経験則が存在するとは認められない。
  • 買主は、売主が実地しようとしていた調査方法の説明をうけ問題がないことを確認している。また、実際に売主は契約締結に先立って土地の調査を行っていて、報告書を売主に提出している。
  • 売主に悪意と同視すべき重大な過失があったとは認められない。
  • これらにより買主の請求は棄却。

(東京地裁 平成24年9月25日判決 一部認容一部棄却(控訴) 判決時報2170号40頁)

4.土地上にかつて存在した建物での殺人事件が発覚した

この事例では棄却されたものの、「過去事件があった物件」については注意が必要

経緯
本件は土地1、土地2、土地3の3筆の土地による争い。
以前この各土地には土地上にそれぞれ木造2階建ての共同住宅が建っていた。
所有者も各土地それぞれ異なる者。
平成15年10月 旧建物の一室で殺人事件があった。
事件については同年10月16日、同月17日に全国紙3紙の社会面に掲載された。
平成17年11月 Yさんが土地1、土地2と共同住宅を購入。
平成18年2月 Yさんが土地3と旧建物を購入。
Yさんが土地1~3を購入した際、重要事項説明書及び賃借人に関する資料には、
事件に関する記述はない。
平成18年9月 Yさんは共同住宅及び旧建物を取り壊す。
アパートを建てて賃料収入を得る計画だったが、これを断念し転売することを決意。
平成19年9月19日 X社は居住用の建物を建築する目的で、宅建業者と一般媒介契約を締結。
平成19年9月27日 X社は一般媒介契約中の宅建業者の仲介で、本件土地1~3を代金1億3360万円で購入。
平成19年10月18日 X社は本件土地の売買代金を支払い終える。
同日までに宅建業者へ仲介手数料427万1400円を支払う。
平成20年5月18日 X社は同宅建業者の仲介で、本件各土地の南側に隣接する土地4をAさんから購入。
代金は3230万円。
平成20年8月5日 X社は購入した土地上に建物を建築。
平成22年8月16日 土地1~4、及び新築建物は、X社が第三者を債務者として設定した根抵当権に基づき担保不動産競売された。
平成23年2月8日 落札価格が納付され、X社は所有権を失った。
平成23年11月頃まで X社は競売手続きに関連して、任意売却を依頼した近隣宅建業者らを通じて
土地3の上にかつて存在していた共同住宅において、殺人事件があったことを知った。
X社は本件土地の売主と仲介業者が、この事件の事実を知っていたのに告げなかったこと、
「周辺環境に影響を及ぼすと思われる施設等」は「ない」等と記載した書面を作成して説明したこと
などが不法行為を構成するとして、6603万円余の損害賠償を求めて提訴した。
判決
  • 売主が元々本件土地を購入した際に受領した資料には事件に関する記載がない。
  • 土地が相場より特に低い価格で購入したという事はない。
  • これらから購入の契約は、事件を前提とした売買契約でなかったと推定される。
  • 新聞記事は事件を大きく取り上げたものではないので、その後長く記憶に残る事件とは言い難い。
  • 売主は地元の宅建業者で、旧建物まで500~600mの範囲に本店があるとしても、そのことから売主が事件を知っていたという事はできない。
  • 本件土地の仲介業者についても、新聞記事になったから事件を知っていたはずと推認することはできない。
  • 本件土地仲介業者が建物の閉鎖登記簿謄本等の調査以外の調査をした証拠はなく、事件を知っていただろうとするX社の主張は前提を欠く。
  • 一般に仲介業者が契約の1年前に建物が取り壊され、更地になっている場合には特段の事情が無い限り過去の事件有無について調査すべきであるとはいえない。

(東京地裁 平成24年8月29日判決 ウエストロー・ジャパン)

5.土地上建物を解体後に自殺があったことが発覚した

契約は解除した後の違約金・解体費用410万円の損害賠償請求の事例。

経緯
平成10年3月 X社は売主から土地付き中古住宅を1600万円で買い受ける。
新築分譲住宅建設目的。
解体した所、平成8年に売主の母親が本件建物内で首つり自殺していたことが判明した。
X社は売主がそのことについて説明しなかったとして売買契約を解除。
売主に対して違約金及び解体費用410万円の損害賠償を求めた。
判決
  • 売主の母親が平成8年に本件建物内で首つり自殺したことは、民法570条の瑕疵に該当する余地があると考えられる。
  • ただ本件土地上に存していた本件建物内での自殺であるから、嫌悪すべき心理的欠陥の対象はもはや特定できない一空間内におけるものに変容している。
  • 土地にまつわる歴史的背景に起因する心理的な欠陥は少ない。
  • 通常一般人が本件土地に新たに建築された建物を住居の用に適さないと感じることが合理的である、という判断される程度には至っていない。
  • よってX社の請求は理由がなく棄却する。

(大阪地裁 平成11年2月18日判決 判例タイムズ1003号218頁)

まとめ

土地瑕疵については契約で定めておくと良い

事例を見て分かるとおり、土地の瑕疵では事前に重要事項説明書や売買契約書で「土地の瑕疵が見つかった時の責任の所在」について定めておくことが重要です。

土地中の埋設物や土壌汚染は買主にとって重要な問題で、契約締結前にできるのであれば土壌汚染を行っておくことが大切と言えます。
(関連記事:高く土地を売るには(【コツ2】地質調査・土壌汚染調査) | 土地の瑕疵担保責任【売却時買主にどこまで伝える?】

面積が大きい土地は隠れた瑕疵の発見は難しいため、時間が経過してから訴えられる可能性もあるということを想定しておきましょう。

心理瑕疵(自殺・他殺などの事件発覚)

新聞等マスメディアで大きく報道された事件があった物件は非常に注意が必要です。売買の目的が、その土地に建物を建て居住用として使用することだとした場合は「そこに一般人が住むのに嫌悪感はないかどうか」が判断の基準となっていることが分かります。

例えそこでは未遂で病院において死亡した場合でも瑕疵担保責任を問われた事例もあります(東京地裁 平成21年6月26日判決)。隠れた心理瑕疵は、自殺や事故の原因や経過年月、該当土地の周囲住宅住民にどの程度知れ渡っているかにより判断が異なります。

売主がそのことを知っていたのか、知らなかったのかということも重要なポイントですが、売主が事件当時の持ち主ではなかった場合、「売主が知っていて売ったのでは」という確実な証拠は見当たらないことがほとんどです。

自殺・他殺ではない死亡事故のあった物件の場合は?

例えば建設工事中の事故死であるなど、一般の労災事故については嫌悪感の強い悲惨な事故だったり、販売する建物そのものの中での事故でない限りは説明義務はないということが考えられています。

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